2018年2月16日金曜日


織と色の考察

織布は糸とそれを支持する空間とで出来ている。
光と影で表現される立体。


経糸と緯糸が交差して織り上がったものが織布となるのですが
建築物の構造も同じで、土台や柱や梁が縦横組み合わされて出来ている。
まず構造的に似ているところが面白い。
そして、経糸と緯糸を交差させる割合や密度を変える事で
布の面、布の質感の表情が変わる。光沢や堅さ柔らかさ、厚み、色、地模様など。

織りと色の関係について簡単なイメージにして書くと、
経糸に白、緯糸に黒を交差させるとグレイが現れる。
(イメージであって、実際は違います)
絵の具で白と黒を完全に混ぜ合わせるのとは違います。
経糸の色と緯糸の色は実際には混ざり合わず織られて重なって、そのように見える。
と言う、あくまでイメージ。

実際は経緯糸が重なった部分の色が混ざる訳でも
重なったもの同士が透けて色が混ざって見える訳でもない。
重なりが有ると言う事は、重なり部分とそうでない部分によって
陰影が出来て、色の見え具合が変わるという感じ。

布の面はその経と緯の糸が交差した点、交差していない線の部分、
そして糸と糸との間(空間)もが点に支持されながら
幾つも幾つも経緯に繰り返されて集積、面(織布)となって構築されている。
結果、面の中には交差した部分とそうでない部分が混ざり合いながら
構成されている事になる。面と言っても完全なフラットではない事になる。
面と書いたけれど、立体なのです。

だから、線と点、(経緯が交差する部分、そうでない部分)
そして線と点の間の空間(糸と糸の隙間)が
一枚の布(面)となった時は、それぞれの交差の重なりの違い(多い少ない、密度)
によって布の表面に立体感が出来て、光や影で濃淡が発生して色の深みとなる。
(他に、糸の太さ質感等他の要素も関係してくる)
これが織の特徴であって私の興味の有る所。

後から表面のみ染める布(プリント布等)やキャンバスに描く絵では、
全部均等(べた)な色になる、もしくは絵の具自体で面を塗って陰影を描く。
経緯で色を変える事はできません。
布面の色合い、表現は違って来る。
経緯での塗り分けはできないので、また違った色の濃淡表現と言う事になる。

織の技法も表現も様々な方法があるけれど、
織にしかできない特徴、織の構造だからできる
色の見え方と経緯の組み合わせからなる、濃淡、深み、質感があって
それらが上手くと言うか、思う様にそれぞれ組み合わされることが
良い、もしくは思い通りの「風合い」のある布になる要素の一つなのだと思う。

(布の風合いについては、織るだけでは表現出来ないので
 また別の行程で風合いを出す。この話はまた別途に)

そして、織布になる前段階の状態の糸や繊維も面白い。
染めだけではなくて、自然(天然)繊維が持っている微妙な色合い、質感。
糸一本は沢山の細い繊維が集まっていて、そこには人間が出せない
色や質感が有る(人間の髪の色がみんな違う様に)。
そこへ人間が手を加え、撚りを加減して足したり引いたり、太さを変化させる事で
また糸自体の風合い、質感が異なる。糸も立体であってそこにも陰影が生じる。

織布の手前の繊維、糸の状態から既に最後の完成(布)の風合いが
どの様なものになるか、影響する。

この様なところが面白いし表現したい(活かしたい)のであって、
組織(織模様)が可愛いとかそういうのではない。
例えば、手紡ぎのマフラーなどは羊毛(素材)の持っている
天然色のままを紡いで織る。
上記した様な事(特徴)を表現したいし、味わえる布をという考えから。
勿論、天然繊維には色以外の性質、特徴(例えば保温性、速乾性等)もあるので
そう言うのも利用した理に適った!?要素(科学的に)も含んだ
暮らしの中で「使う」道具としての布ということ。
こういうところを含めてデザインしたいし、そうでないとデザイン出来ない気がする。

話が戻るけれど、織の構造の手前には素材の構造というのも色々ある。
今書いた様な、素材(布になる前の糸、繊維)の構造で言うと
速乾性、保温性など繊維の持っている性質
それを作っている繊維の構造がまた面白い。
繊維はただなんとなく、真っ直ぐだったり縮れていたり、
強靭だったり柔らかかったりする訳ではないから。
理由があって細かったり太かったりする。
結局掘り下げて行くと、繊維の性質、構造、糸の加工方法から理解していないと
思っている求めている布は作れないと言う事になるけれど。

織、色、繊維の事などは、どれもこうして書いてみると
当たり前と言えば当たり前、単純な事なのだけれど
身を以てそれを実感できたり分析できるのは、やはり常に素材と向き合い続けて
再認識するのだなぁと。自分は遠回りしているかもしれないけれど。

書いてはみたものの、頭の中で思っている事感じている事を
的確に文章で表すのは文章力も乏しいので難しい。

それから織るという行為と時間。布と空間の作用。
手で織る、機械で織る事の違い。
書き出すときりがないのでまた続きはいつか思い立った時に。

小さな作品は、こういう面倒臭い頭の中の考え(理屈みたいなの!?)は抜きで
単純に織物を身近に使ってもらいたい、織を知ってもらいたい
その取っ掛かりとして考えて作ってきたので、それはそれとして…
けれど、頭の中は次の段階に行っているので
そちらもこれからはカタチにできるように制作をしていきたい。
時々、気がつかないうちに前へ進んでいる、ほんの少しずつ。
進んでいるのか?戻っているのか?よく解らないけれど、笑。


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